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契約書なしの取引は危険?中小企業が知っておくべき契約の基本

更新日:6月6日

中小企業の現場では、長年の付き合いや信頼関係に基づいて、「契約書を交わさずに取引をしている」というケースが少なくありません。電話一本や口頭で「お願いします」「わかりました」で済ませてしまうことも、現実にはよくあります。

 

しかし、そのような取引方法には大きな落とし穴があるのをご存知でしょうか?

 

この記事では、中小企業の経営者や担当者が押さえておくべき「契約の基本」について、できるだけわかりやすく解説します。契約書の役割、口約束のリスク、そして最低限知っておきたいポイントを学び、トラブルを未然に防ぐヒントにしてください。


そもそも契約とは?

 

「契約」と聞くと、難しい法律用語や分厚い書類を想像する人もいるかもしれません。でも、実は契約というのは、とてもシンプルなものです。

 

契約とは、

「当事者どうしが、ある約束ごとについて合意すること」

です。

 

たとえば、ある商品を「100個、1個100円で来週までに納品してもらう」という約束があったとします。このような内容に、両者が合意すれば、それはもう「契約が成立した」とみなされます。書面がなくても契約は成立するのです。

 

しかし——ここが重要です。

契約が成立していても、それを証明できなければ、意味がない。

契約書がないことで起きるトラブルとは?

 

契約書がない取引では、後々になって「言った・言わない」の争いになることがよくあります。具体的に、どんなトラブルが起きるのでしょうか?

 

1. 支払いに関するトラブル

 

よくあるのが、「金額が違う」「支払い期限が守られない」「代金が支払われない」といった問題です。

 

たとえば…

 

「この前の件、10万円でお願いしたでしょ?」

「いやいや、5万円って聞いてたよ?」

 

このような認識のズレが起きるのは、契約書で条件を明確にしていないからです。

 

2. 納期や品質のトラブル


  • 「いつまでに納品するか」

  • 「どんな仕上がりを求めていたか」

 

といった点も、口頭では誤解が生じやすいです。仮に一方が「言ったつもり」でも、相手が「聞いてない」と言えば、それを証明する手段がなければ主張が通りません。

 

3. 契約を解除したいときの混乱

 

たとえば、「もう取引をやめたい」と思っても、どの時点でやめられるのか、違約金が発生するのか、などのルールが決まっていなければ、相手とトラブルになります。


「信頼していたのに…」では済まされない

 

特に中小企業では、「長年付き合いのある業者だから大丈夫」「知り合いだから口約束で十分」と思いがちです。ですが、信頼関係がある相手ほど、万が一のときに感情的なトラブルになりやすいのです。

 

お互いに「そんなつもりじゃなかった」と言い合っても、契約書がなければ、どちらの言い分が正しいかを判断するのはとても難しくなります。


契約書が果たす3つの役割

 

契約書は、単なる形式的な書類ではありません。大切な役割があるのです。

 

1. 内容を明確にする


  • 商品の内容や数量

  • 金額と支払い方法

  • 納期

  • 納品場所

  • 万が一トラブルが起きたときの対応

 

こうしたことをきちんと文書にしておけば、お互いの認識のズレを防げます。

 

2. 証拠になる

 

トラブルが起きたとき、契約書があれば「約束していた内容はこれです」と証拠を示すことができます。裁判などになっても非常に強い武器になります。

 

3. 相手に誠意を見せる

 

契約書を交わすことは、「きちんとした取引をしたい」という姿勢の表れでもあります。信頼関係を深めるためにも、実は契約書は役立ちます。


書面で残すのが難しいときの代替策

 

とはいえ、毎回きっちり契約書を交わすのは現実的に難しい場合もあります。そのようなときには、メールやLINE、FAXでも構いません。やりとりを記録として残すことが大切です。

 

たとえば:

 

「○月○日までに○○を納品いただけるというお話で承知しました。代金は○○円、振込期日は○月○日です。よろしくお願いいたします。」

 

このようなメッセージを残しておけば、契約内容を確認できる証拠になります。

契約書に最低限書くべきポイント

 

契約書を作成する場合、次のような項目は最低限記載しておきましょう。

  1. 契約の目的(何をするのか)

  2. 契約の対象(商品の名前やサービスの内容)

  3. 数量や納期

  4. 金額と支払方法

  5. 期間(契約がいつまで続くのか)

  6. 契約の終了条件(中止・解除のルール)

  7. 損害が出たときの責任の取り方

  8. 紛争が起きたときの解決方法(裁判所の指定など)

 

このように、「誰が」「何を」「いつまでに」「いくらで」「どのように」行うかを明確にすることがポイントです。


契約書は専門家に頼むべき?

 

大きな取引や複雑な内容の場合は、弁護士に相談するのが安心です。費用はかかりますが、それ以上の損失を防げる可能性があります。

 

一方で、比較的シンプルな取引であれば、ネット上のテンプレートを参考にして作成することも可能です。最近では、中小企業向けの無料フォーマットを提供している公的機関もあります。


まとめ:小さな会社ほど「契約書」が大事

 

中小企業にとって、「契約書なんて堅苦しい」と思う気持ちはわかります。しかし、むしろ小さな会社こそ、自分たちの立場を守るために、契約内容をきちんと残すことが重要です

 

たった1回のトラブルで、信頼やお金、時間を失うリスクがあります。そうなる前に、契約書や記録をしっかり残す習慣をつけましょう。

 

「お互いの信頼の証」としての契約書。今日から、見直してみてはいかがでしょうか。

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