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取引先が倒産!売掛金を回収するためにできること

更新日:2025年6月12日

中小企業の経営者や経理担当者にとって、「売掛金の回収」は日々の業務の中でも特に重要な課題です。

そんな中、ある日突然、取引先からこんな連絡が届いたらどうでしょうか。


「〇〇株式会社は本日をもって破産手続きを開始しました。」

頭が真っ白になる方も少なくないでしょう。

「うちの売掛金はどうなるの?」

「何か手続きが必要なのか?」

「泣き寝入りするしかないのか?」

これまで何度も取引してきた会社で、売掛金がまだ数百万円残っているのに。

こうしたトラブルは中小企業、特に建設業・製造業・卸売業などで日常的に発生しています。

 

本記事では、取引先の倒産に直面したときに、売掛金を回収するために中小企業や個人事業主がとるべき法的対応について、弁護士の立場から分かりやすく解説します。


1. まず確認すべきこと:本当に「倒産」なのか?

 

一口に「倒産」といっても、実はさまざまな形があります。

  • 破産申立(法的整理):裁判所に破産を申し立てている場合。

  • 民事再生・会社更生(再建型手続):事業継続を前提に債務整理を行う法的手続。

  • 私的整理(任意整理):裁判所を通さず、金融機関等と話し合って支払猶予等を得るもの。

  • 夜逃げ・廃業:何の連絡もなく突然事業停止している場合。

 

倒産の形によって、取れる対応や回収の可能性も異なります。まずは、以下の点を早急に確認しましょう:

  • 裁判所からの通知が届いていないか?

  • 債権者集会の案内はあるか?

  • 弁護士や破産管財人の連絡先は記載されているか?

 

これらの情報がわかれば、法的手続に入っているかどうかが確認できます。


2. 「債権届出」を忘れずに!

 

破産や民事再生が開始されると、裁判所から「破産手続開始通知」「再生手続開始決定通知」などが届きます。この通知には、「〇月〇日までに債権届出を行ってください」と記載されています。

 

この届出を怠ると、配当金がもらえない、または手続きに参加できない可能性があります。

仮に全額回収は難しくとも、1円でも戻ってくる可能性があるなら、必ず提出しましょう。

 

届出には、以下のような資料を添付します:

  • 請求書・納品書・契約書などのコピー

  • 相手の会社名義の受領印がある書類

  • 納品実績の一覧など

 

早ければ倒産通知から1ヶ月以内に期限が設定されることもありますので、迅速な対応が必要です。


3. 担保・保証・相殺など、回収可能性をチェック!

 

倒産が現実となっても、まだ「すべてをあきらめる」必要はありません。以下のような方法で、売掛金を回収できる可能性があります。

 

(1)担保権の行使

 

取引先の在庫や設備に対して譲渡担保所有権留保を設定していた場合、それらを回収して売却できます。建設業では、重機・資材の所有権を自社に留保していたケースなどが該当します。

 

また、建設現場に資材を搬入していた場合、「引き揚げ」が可能かどうか、契約条項や納品状態を確認しましょう。

 

(2)連帯保証人の有無

 

経営者個人や代表者が連帯保証人になっている場合、倒産企業本体とは別に、保証人へ請求を行うことが可能です。

 

契約書や発注書の末尾などに保証条項がないか、再度確認してみてください。

 

(3)相殺できないか

 

相手企業に対してこちらが支払い義務を負っている(例:相殺できる買掛金がある)場合は、その金額分を相殺できます。

ただし、法的手続に入ってからの相殺は制限される場合もあるため、慎重な検討が必要です。


4. 倒産前なら「仮差押え」などの迅速な手段も

 

相手企業がまだ法的に倒産していない(=破産申し立て前)段階であれば、弁護士に相談のうえ、すぐに以下のような手段をとることで、回収の可能性が高まります。

 

◉ 仮差押え

 

取引先の銀行口座や不動産、車両などの資産に対して仮差押を申し立て、処分できないようにします。

「他の債権者より先に動く」ことで優先順位を確保できることもあります。

 

◉ 内容証明郵便

 

支払催促の意思を明確にすることで、相手が破産手続に入る前に自主的に支払ってくることがあります。

 

仮差押えなどの手続はスピードが命です。支払遅延が長引いている場合は、早めに弁護士へ相談してください。


5. 税務上の「貸倒処理」も忘れずに

 

債権が回収不能になった場合、税務上は「貸倒損失」として処理することができます。

ただし、次のような要件を満たす必要があります:

  • 相手企業の倒産や破産開始決定などが客観的に確認できること

  • 請求書や証拠書類を保存していること

 

貸倒損失として経費計上すれば、法人税等の負担が軽減されることもあります。経理・税理士とも相談しておきましょう。


6. 実務経験からのアドバイス

 

弁護士として倒産案件を多数取り扱ってきた経験から申し上げると、以下のような点が、事前の予防や迅速な回収において極めて重要です。

  • 取引開始時に「契約書+保証人付き覚書」を作成しておく

  • 売掛金が膨らみすぎる前に定期的な入金を確認する(信用取引の限度管理)

  • 経営状況に異変が見られたら即対応(納品の一時停止・支払条件変更など)


まとめ:まずは「動く」ことが最善の対応

 

取引先が倒産してしまった場合、売掛金の全額回収は現実的には難しいケースが多いのが実情です。

しかし、「何もしない」で諦めてしまえば、1円も戻ってきません。

  • 債権届出や仮差押えなどの法的手続

  • 契約上の担保・保証・相殺の可能性検討

  • 貸倒処理による税負担の軽減

 

これらを適切に講じることで、「最小限の損失」にとどめられることもあります。

 

当事務所では、倒産トラブルや債権回収のご相談に迅速に対応しております。

顧問契約を締結いただくことで、万が一の際にも「すぐ動ける」体制が整います。お気軽にご相談ください。


 
 
 

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