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下請法とは?中小企業が守るべきルールと罰則とは

更新日:6月6日

中小企業の経営者や管理職の皆さまの中には、「下請法」という言葉を聞いたことはあっても、実際に何を定めている法律なのか、どういう場合に適用され、違反するとどうなるのかについて、正確に理解されていない方も多いかもしれません。

 

しかしながら、下請法に違反すると、発注者側であれば公正取引委員会や中小企業庁からの勧告や指導を受けることがあり、受注側であれば不利益な取引を黙認してしまうことにもなりかねません。特に、製造業、小売・IT関連業界などでは、日常的に「親事業者」と「下請事業者」の関係が存在しており、知らず知らずのうちに違反しているケースもあります。

 

この記事では、「下請法」とは何か、その基本的な仕組みや守るべきルール、違反した場合の罰則などを、弁護士の立場からわかりやすく解説します。


1. 下請法とは何か?

 

正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」で、昭和31年(1956年)に制定されました。主な目的は、中小企業などの下請事業者が、親事業者との取引において不利益を受けることを防ぎ、適正な取引関係を確保することにあります。

 

取引の力関係では、どうしても発注側(親事業者)の方が強くなりがちです。例えば、支払期限を守らない、突然の値下げ要求、成果物の返品など。こうした行為は、下請法で明確に禁止されています。


2. 下請法が適用される取引とは?

 

下請法が適用されるには、以下の2つの要件が必要です。

 

① 親事業者と下請事業者の資本金規模

  • 親事業者の資本金が3億円超で、下請事業者の資本金が3億円以下である場合。

  • 親事業者の資本金が1千万1円〜3億円以下で、下請事業者の資本金が1千万円以下の場合。

  • 資本金の大小によって、取引の力関係が生じることを前提としています。

 

② 対象となる「取引類型」

 

下請法の対象になるのは、次のような業種や契約です。

  • 製造委託(部品や製品の製造を委託)

  • 修理委託(機械や設備の修理)

  • 情報成果物作成委託(ソフトウェアやデザインなど)

  • サービス提供委託(データ処理・設計・清掃などの業務)

 

例えば、システム開発を外注しているIT企業、建材の加工を依頼する建設会社など、多くの業種で日常的に発生する契約が該当します。


3. 親事業者が守るべき「義務」とは?

 

親事業者が下請事業者と取引をする際には、下請法上、以下の義務を守らなければなりません。

 

(1)書面交付義務

 

発注時には、契約の内容を記載した「書面」を交付することが義務付けられています。

書面には、以下のような情報を明記しなければなりません。

  • 商品またはサービスの内容

  • 代金額および支払期日

  • 納期や納品場所

  • 損害賠償や返品に関する規定 など

 

紙媒体だけでなく、PDFなどの電子書面でも可能です。

 

(2)代金支払い義務

 

下請代金は、下請事業者が成果物やサービスを納品した日から、60日以内に支払う必要があります。

現金払いでも振込でも構いませんが、「手形払いで120日先」などは違反となります

 

(3)帳簿記載義務

 

取引内容について、一定期間、帳簿に記載して保存する義務があります。記載内容には、取引の相手方、内容、代金、支払日などがあります。


4. 親事業者が「やってはいけない行為」=禁止行為

 

下請法では、親事業者による以下のような行為を禁止しています。

 

❌ 支払遅延

 

納品が完了しているにもかかわらず、約束の支払期日を過ぎて支払う行為。

 

❌ 下請代金の一方的な減額

 

発注後に「材料費が下がったから」といった理由で、合意なく一方的に代金を引き下げる行為。

 

❌ 不当な返品

 

完成した成果物を、親事業者の都合(例:発注ミス・販売不振)で返品する行為。

 

❌ 不当なやり直し(受領拒否)

 

明らかな欠陥がないのに、「やり直せ」として納品を拒否する行為。

 

❌ 賠償の押しつけ

 

親事業者側の都合で納期が遅れたのに、それを理由に損害賠償やペナルティを課す行為。

 

これらの禁止行為は、親事業者と下請事業者との力関係を背景に起きやすく、実際に中小企業が泣き寝入りしてしまうケースも少なくありません。


5. 違反した場合の罰則・措置

 

下請法に違反すると、主に以下のような処分や措置を受ける可能性があります。

 

◉ 行政指導・勧告

 

公正取引委員会または中小企業庁が、違反行為を是正するよう「指導」や「勧告」を行います。勧告を受けると、社名や違反内容が公表されることがあります。

 

◉ 企業名の公表

 

「不当な代金減額」「支払遅延」などの重大な違反があると、会社名・内容・違反件数が中小企業庁のウェブサイト等で公表され、信用失墜のリスクがあります。

 

◉ 改善報告書の提出

 

再発防止策などをまとめた報告書の提出が求められる場合もあります。

 

なお、下請法には刑事罰は原則としてありませんが、違反の程度によっては独占禁止法違反に該当する可能性もあります。


6. 弁護士からのアドバイス:中小企業が気をつけるべきポイント

 

【受注側(下請事業者)】の注意点

  • 口頭契約は極力避け、契約書や注文書をきちんと保管しましょう。

  • 支払遅延や代金減額があった際には、内容証明郵便での通知を検討しましょう。

  • 泣き寝入りせず、公正取引委員会や弁護士に相談することで対応が変わります。

 

【発注側(親事業者)】の注意点

  • 契約書のテンプレートは、下請法対応済みのものを使いましょう

  • 支払いは「納品完了から60日以内」が原則です。手形支払いの見直しも必要です。

  • 管理部門・購買部門への下請法の社内研修も有効です。


まとめ

 

「下請法」は、中小企業にとって自らを守る重要な法律であると同時に、取引先との信頼関係を築くためにも欠かせないルールです。

 

発注者の立場であっても、受注者の立場であっても、下請法を正しく理解し、適正な取引を行うことが、企業としての持続的な成長につながります。

 

当事務所では、下請法に関する契約書チェック、トラブル発生時の対応のご相談も承っております。お気軽にご相談ください。

 
 
 

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