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離婚の種類とその違い:協議・調停・裁判の選び方

更新日:6月12日

離婚を考えたとき、まず最初に知っておきたいのが「離婚の手続きには種類がある」ということです。日本の法律では、離婚には主に3つの方法があります。「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」です。それぞれの特徴、進め方、メリット・デメリットを理解することで、自分に合った適切な手続きを選ぶことができます。

 

今回は、弁護士の立場から、これら3つの離婚の種類について詳しく解説するとともに、どのようなケースでどの方法が適しているかについても触れていきます。


1.協議離婚とは:もっとも一般的な離婚のかたち

 

■ 協議離婚の概要

 

協議離婚とは、夫婦が話し合いによって離婚に合意し、市区町村役場に離婚届を提出することによって成立する、もっとも簡易な離婚方法です。日本では約9割の離婚がこの協議離婚によって成立しています。

 

■ 必要な条件

  • 夫婦双方が離婚に合意していること

  • 離婚届に必要事項を記入し、署名・押印をして役所に提出すること

  • 未成年の子がいる場合には「親権者」を定めること

 

■ 協議離婚のメリット

  • 手続きが簡単で費用がほとんどかからない

  • スピーディに離婚できる(書類が整えば即日受理される)

  • 当事者の意思で内容を柔軟に決められる

 

■ 協議離婚のデメリット

  • 話し合いが不十分なまま離婚してしまい、後でトラブルになるリスクがある

  • 慰謝料や財産分与、養育費などをきちんと取り決めないと、後から請求が難しくなる

  • 言った・言わないの争いを防ぐため、**離婚協議書(できれば公正証書)**の作成が重要


2.調停離婚とは:家庭裁判所で話し合う離婚

 

■ 調停離婚の概要

 

調停離婚は、夫婦間での話し合いがまとまらない場合に、家庭裁判所の調停手続を利用して行う離婚です。家庭裁判所で「調停委員」を介して、双方の主張を調整し、合意を目指します。調停が成立すれば、離婚が成立します。

 

■ どんなときに利用する?

  • 一方が離婚に応じない場合

  • 親権や養育費、財産分与などで意見が対立している場合

  • 感情的になって冷静な話し合いができない場合

 

■ 調停離婚のメリット

  • 調停委員を通して話せるため、直接対話が困難なケースでも進められる

  • 第三者が入ることで冷静な解決が図れる

  • 合意した内容は「調停調書」に記載され、強制執行力を持つ(養育費の未払い対策になる)

 

■ 調停離婚のデメリット

  • 期日が月1回程度なので、成立までに時間がかかる(通常数ヶ月〜半年程度)

  • 調停は原則として本人出頭が必要(例外あり)

  • 弁護士を付けると費用が発生する


3.裁判離婚とは:裁判官が離婚の可否を判断

 

■ 裁判離婚の概要

 

裁判離婚は、調停でも話がまとまらなかった場合、または一方が調停にすら応じず、やむを得ない場合に、家庭裁判所に訴訟を提起して行う離婚です。原則として、調停前置主義があるため、いきなり裁判を起こすことはできません。

 

■ 裁判で離婚できるのはどんなとき?

 

裁判離婚が認められるには、民法770条に定められた「法定離婚原因」が必要です。たとえば:

  1. 配偶者に不貞行為があった(不倫など)

  2. 悪意の遺棄(生活費を渡さない、家から出て行って戻らない等)

  3. 3年以上の生死不明

  4. 強度の精神病で回復の見込みがない

  5. その他婚姻を継続しがたい重大な理由(DV、モラハラ、著しい価値観の相違など)

 

■ 裁判離婚のメリット

  • 法的な結論を得ることができる

  • 不貞・DVなどの責任を明確にし、慰謝料請求などが可能

  • 弁護士を代理人にできるため、心理的負担が軽減される

 

■ 裁判離婚のデメリット

  • 手続きが非常に長期化する(1〜2年かかることも)

  • 証拠がないと主張が通らないため、準備が大変

  • 弁護士費用や裁判費用など、金銭的・精神的負担が大きい


4.どの方法を選べばよい?|ケース別の選び方

 

【ケース1:双方が離婚に合意済み】

 

協議離婚で十分。ただし、金銭面や子どもに関する取り決めは**文書化(公正証書が望ましい)**しましょう。

 

【ケース2:離婚に合意しているが、条件で揉めている】

 

調停離婚がおすすめ。第三者を介することで冷静な話し合いが可能に。

 

【ケース3:相手が離婚に応じない/話し合いができない】

 

調停を経て、場合によっては裁判離婚へ。早い段階で弁護士に相談するのが賢明です。

 

【ケース4:DVやモラハラなど、直接話すのが怖い】

 

→ 弁護士を通じて調停を申し立てるか、保護命令や接近禁止の手続きと併せて対処しましょう。


5.弁護士に相談するメリット

 

離婚は単なる「別れ話」ではありません。財産分与、親権、養育費、慰謝料など、人生に大きな影響を及ぼす法的な取り決めが必要になります。

 

弁護士に相談すれば、

  • 自分に有利な条件を見極めて交渉してもらえる

  • 必要な証拠の収集や準備について助言が得られる

  • 相手とのやりとりのストレスから解放される

といった利点があります。

 

「離婚するかどうか」ではなく、「離婚をどう進めるか」で悩んでいる段階でも、弁護士の助けを借りることで冷静な判断ができるようになります。


まとめ

 

離婚には「協議」「調停」「裁判」の3つの手続きがあり、それぞれの特徴と適した状況があります。以下に簡単にまとめます。

手続き

特徴

向いているケース

協議離婚

自由な話し合いによる離婚

話し合いができ、条件も合意済み

調停離婚

家庭裁判所で第三者が仲介

条件で揉めている、話し合いが難しい

裁判離婚

判決による離婚

離婚に応じない、不貞・DVなど争いがある

離婚は、人生の再スタートでもあります。だからこそ、焦らず、冷静に、そして確実に進めるために、正しい知識と専門家のサポートを活用してください。

 
 
 

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