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事業承継の準備、いつから始める?中小企業が陥りやすい落とし穴と対策とは

更新日:2 日前

中小企業の経営者にとって避けて通れないのが「事業承継」です。

「まだ先の話」「子どもが継ぐから心配ない」と考えている方も多いかもしれませんが、事業承継は“早すぎる”ことはあっても、“早すぎて困る”ことはまずありません。

 

むしろ、「まだ大丈夫」と思っているうちに手遅れになるケースが多く見受けられます。

 

本記事では、弁護士の立場から、中小企業が事業承継で陥りがちな落とし穴と、いつ・何から準備を始めるべきかを、わかりやすく解説します。


1. 事業承継はなぜ重要なのか?

 

中小企業庁の調査によると、日本では経営者の高齢化が急速に進んでおり、2025年までに中小企業の経営者の約6割が70歳を超えるとも言われています。

 

しかしそのうち、多くの企業で後継者が未定または準備不足であることが問題となっています。後継者が見つからずに廃業する企業も多く、黒字廃業という言葉すら生まれています。

 

✔ 黒字でも廃業に追い込まれる?

 

実際、利益を出していても、経営者が引退した後の体制が整っていなければ、事業の継続は難しくなります。

社員の雇用や取引先との関係にも影響が出るため、早めの承継準備が企業の“未来”を守るカギなのです。


2. 事業承継の「3つのタイプ」

 

事業承継には大きく分けて3つのタイプがあります。

 

① 親族内承継

 

子どもや親族に会社を引き継ぐ方法。昔ながらのやり方ですが、現在では減少傾向にあります。

 

② 社内承継(従業員承継)

 

役員や長年の社員など、社内にいる人物に経営を託す方法。内部の事情に詳しいため、比較的スムーズに移行できることが多いです。

 

③ 社外承継(第三者承継・M&A)

 

外部の企業や経営者に事業を譲渡する方法。M&Aなどを活用するケースも増えています。

 

それぞれにメリット・デメリットがありますが、いずれの場合も計画的な準備が不可欠です。


3. 中小企業が陥りやすい落とし穴とは?

 

ここからは、事業承継の現場でよく見られる失敗例・トラブルを紹介します。

 

❌ 落とし穴①:準備を後回しにしてしまう

 

もっとも多いのが、「時間があるからまだ大丈夫」と先延ばしにしてしまうパターンです。

 

経営者が突然の病気や事故で引退を余儀なくされた場合、後継者も決まっておらず、経営が空白になるリスクがあります。

さらに、取引先や銀行からの信用も低下し、資金繰りが悪化することもあります。

 

対策:遅くとも「60歳前後」から準備に着手するのが理想です。


❌ 落とし穴②:後継者と十分に話し合っていない

 

親族や社員に承継するつもりでも、本人が承継を望んでいなかったというケースもあります。

一方で、承継する側が「何も教えてもらっていない」「経営に関われる状態ではなかった」と感じている場合も。

 

対策:早い段階から後継候補とコミュニケーションをとり、「引き継ぐ覚悟と準備」ができているか確認することが必要です。


❌ 落とし穴③:株式の承継を考えていない

 

中小企業では、会社の株式を経営者個人がほとんど保有しているケースが一般的です。

 

しかし、株式をどう引き継ぐか考えていないと、相続発生時に相続人間でトラブルが起きたり、議決権の分散で経営に支障を来したりすることがあります。

 

対策:株式をどう移転するか(贈与、譲渡、信託等)を含めた承継プランが必要です。


❌ 落とし穴④:借入金の保証問題を放置している

 

経営者が会社の借入金に個人保証をしている場合、そのまま承継してしまうと、後継者にも保証責任が生じる可能性があります。

 

この保証問題を放置したままでは、承継を嫌がられる要因にもなりかねません。

 

対策:保証の解除や、金融機関との交渉を含めた資金面の整理が必要です。


4. いつから始める? 事業承継のタイムライン

 

事業承継は短期間で完了するものではありません。少なくとも3〜5年はかけて準備すべきです。

 

【目安のスケジュール】

時期

やること

5〜10年前

後継者候補の検討・育成計画の立案

3〜5年前

株式・財産の承継方法の検討、専門家との相談開始

1〜3年前

取引先や銀行、従業員への周知、引継ぎ実務の開始

半年前〜当日

法的手続、役職変更、実務の完全移行

「後継者の育成」は最も時間がかかるため、できるだけ早く取り掛かることが重要です。


5. 弁護士に相談すべきタイミングとは?

 

次のような場合には、ぜひ弁護士を含む専門家に相談してみてください。

  • 株式をどう移転すればよいか分からない

  • 遺言や信託を活用して承継したい

  • 複数の相続人の間でトラブルが懸念される

  • M&Aを検討しているが、法的な不安がある

  • 現在の会社契約を見直したい(借入・保証・賃貸借等)

 

弁護士は、単に「トラブルを処理する人」ではなく、「トラブルを予防する人」でもあります。

法務・相続・契約・交渉など幅広い分野で、中長期的な事業継続のサポートが可能です。


まとめ:事業承継は“経営のバトンリレー”

 

事業承継は、単なる“後継者探し”ではありません。

会社の理念、技術、顧客との信頼、そして従業員の雇用を「次の世代にどうつなぐか」を考える、大切な経営課題です。

 

中小企業では、経営者個人の判断に委ねられる部分が大きいため、後回しにすればするほどリスクは大きくなります

 

ぜひ、今日からでも「自分の会社はどう承継すべきか?」を意識してみてください。

そして、必要に応じて専門家と連携しながら、無理なく、着実に準備を進めていくことが、企業と家族、従業員の未来を守ることにつながります。

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