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AIの回答を信じて判断した結果、取り返しのつかない事態に陥ってしまった

更新日:17 時間前

近年、生成AIの普及によって、法律に関する情報も簡単に入手できるようになりました。

契約書の作成方法、従業員とのトラブル対応、売掛金の回収、解雇の可否など、経営上の悩みをAIに質問すれば、数秒でそれらしい回答が返ってきます。

そのため、

「まずはAIに聞いてみよう」

「弁護士に相談するほどでもないだろう」

と考える経営者も増えています。

しかし、私たち弁護士のもとには、実際に

「AIの回答を信じて対応した結果、事態が悪化してしまった」

という相談がかなり増えてきています。

今回は、実際に起こり得る事例をもとに、AIを過信することの危険性についてお話ししたいと思います。


解雇できると思っていた

ある中小企業の経営者から相談を受けた事案です。

問題となった従業員は、無断欠勤を繰り返し、勤務態度にも問題がありました。

経営者はインターネットで情報を集め、さらに生成AIにも相談しました。

するとAIは、

「無断欠勤が続いている場合は解雇が可能です」

という趣旨の回答を返しました。

そこで経営者は、「法律上問題ない」と判断し、従業員に即日解雇を通知しました。

ところが、その後、従業員側から弁護士が就き、

  • 就業規則に解雇事由が十分定められていない

  • 欠勤理由の調査が不十分

  • 改善指導や警告が行われていない

  • 解雇回避努力がなされていない

などの点を指摘されました。

結果として会社は解雇を撤回せざるを得なくなり、多額の解決金を支払うことになりました。

AIの回答自体は、一般論としては間違いではありません。

しかし、法律問題は一般論だけでは決まりません。

個別の事情や証拠、これまでの経緯によって結論が大きく変わるのです。


存在しない判例を根拠にしていた

別の事案では、契約トラブルに関する相談がありました。

相談者はすでにAIを利用して調査を行っており、

「このケースは最高裁判例があります」

「D1-Lawにも掲載されています」

と説明していました。

しかし、内容を確認すると、その判例は実在しませんでした。

裁判年月日も事件番号も架空でした。

さらに驚くべきことに、判決理由まで詳細に作り込まれていたのです。

相談者は当然、その判例が実在するものと思い込み、取引先との交渉に利用していました。

しかし相手方の弁護士から、

「その判例は存在しません」

と指摘され、一気に交渉上の信用を失ってしまいました。

AIは自信満々に説明するため、利用者は誤りに気付きにくいという特徴があります。

しかも、存在しない判例であっても、実在する判例らしく詳細に説明することがあります。

これは生成AIの代表的な問題点として知られており、「ハルシネーション」と呼ばれています。


契約書をAIだけで作成した結果

契約書作成の場面でも同様です。

ある会社では、業務委託契約書をAIだけで作成し、そのまま使用していました。

しかし実際にトラブルが発生した際、

  • 成果物の権利帰属が曖昧

  • 損害賠償責任の範囲が不明確

  • 契約解除条項が不十分

という問題が判明しました。

AIは一般的なひな形を作ることはできます。

しかし、

「その会社にとって何が重要なのか」

「どのようなトラブルが起きる可能性があるのか」

まで理解して契約書を作成しているわけではありません。

結果として、契約書が存在しているにもかかわらず、自社を守ることができないという事態になってしまいました。


AIは便利な道具である

誤解していただきたくないのは、AIそのものを否定したいわけではありません。

実際、私たち弁護士も業務の中でAIを活用する場面があります。

法律用語をわかりやすく説明させたり、論点整理を行ったり、アイデア出しを行ったりする場面では非常に有用です。

問題なのは、

「AIが言っているから正しい」

と思い込んでしまうことです。

AIは資格を持った専門家ではありません。

責任を負うこともありません。

誤った回答によって損害が発生しても、最終的な責任を負うのは利用者自身です。


法律問題は「個別事情」がすべて

法律問題は、同じように見える事案でも、事実関係が少し違うだけで結論が変わります。

だからこそ、裁判所も弁護士も、

  • 契約書

  • メール

  • LINEのやり取り

  • 社内規程

  • 過去の経緯

などを丁寧に確認しながら判断します。

AIは一般論を示すことはできます。

しかし、あなたの会社の事情を踏まえた最終判断まではできません。


まとめ

生成AIは非常に便利なツールです。

しかし、企業法務やトラブル対応においては、あくまで「参考資料の一つ」と考えるべきでしょう。

AIは時として、

  • 存在しない判例を示す

  • 誤った法解釈を行う

  • 重要なリスクを見落とす

  • 自信満々に誤答する

ことがあります。

そして、その誤りに気付いたときには、すでに取り返しのつかない状況になっていることも少なくありません。

企業を守るために必要なのは、AIを排除することではなく、その限界を正しく理解することです。

重要な判断やトラブル対応については、AIだけで結論を出さず、早い段階で専門家へ相談することをおすすめします。

それが結果として、時間と費用、そして会社の信用を守る最善の方法なのです。

 
 
 

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