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実例で学ぶ!中小企業が直面した法的トラブルとその解決法

更新日:6月6日

中小企業の経営には、日々の売上や人材確保だけでなく、「思わぬ法的トラブル」もつきものです。

 

「うちは小さな会社だから関係ないだろう」と思っていたのに、ある日突然、取引先との契約で揉めたり、従業員とのトラブルに発展したり…。

事前に備えておけば防げたことも、実際に起きてからでは高くつくことがあります。

 

この記事では、実際に中小企業が直面した法的トラブルと、その解決方法について、3つの具体例を通じてわかりやすく紹介します。自社のリスク管理のヒントとして、ぜひ参考にしてください。


事例1:口約束で進めた取引が“代金未払い”トラブルに発展

 

【背景】

 

大阪で製造業を営むA社は、長年付き合いのあるB社から機械部品の追加注文を受けました。取引は急ぎだったため、A社の担当者は「とりあえず電話で注文内容を確認して、すぐ作業に取りかかろう」と判断。契約書や注文書は交わさないまま納品まで完了しました。

 

ところが納品後、B社は支払いを渋り始めました。

 

「この数量は頼んでいない」

「仕様が違っていて使えない」

「うちの担当はそんなことは言っていない」

 

A社は困り果て、支払いを求めましたが、B社は責任を否定。結果、100万円以上の代金が回収できない状況に陥りました。

 

【解決方法】

 

A社は顧問弁護士に相談し、内容証明郵便を送って請求しました。しかし、契約書や注文書などの証拠がなかったため、交渉は難航。

 

最終的には裁判に持ち込まず、双方の妥協で一部金額のみ支払われる形で和解しました。

 

【教訓】

  • 契約書がなくても契約は成立するが、証明できないと主張が通らない

  • 少額でも注文書やメールでの記録を必ず残すべき

  • 「信頼しているから書類はいらない」は大きなリスク


事例2:従業員のSNS投稿が炎上、企業の信頼が低下

 

【背景】

 

東京で飲食チェーンを経営するC社では、ある店舗のアルバイトがSNSに不適切な動画(冷蔵庫に入る、食材を投げる等)を投稿。すぐにネット上で拡散され、「○○店の衛生管理は大丈夫なのか?」という批判が殺到しました。

 

この騒動により、店舗へのクレームが急増し、一時的に売上が30%以上落ち込みました。

 

【解決方法】

 

C社はすぐにアルバイトとの雇用契約を解除し、SNS上で謝罪文を公表。法務担当が動画削除の対応を行い、店舗では緊急の衛生チェックと従業員研修を実施しました。

 

さらに、就業規則を改定し、SNSの利用に関する規定を明文化。すべての従業員に対し、SNS研修を義務化しました。

 

【教訓】

  • 社内規則に「SNS利用のガイドライン」を盛り込むことは必須

  • 雇用契約書に「企業イメージを損なう行為の禁止」等の項目を入れる

  • トラブル発生時は迅速な対応と誠意ある説明が、信頼回復の第一歩


事例3:ライバル会社に自社のノウハウを流出された

 

【背景】

 

名古屋のIT企業D社は、自社で開発した業務管理アプリが好調で、急成長中でした。

 

ところが、最近退職した元社員が、ライバル会社に転職したことをきっかけに、そちらの会社でほぼ同じ内容のソフトが販売されていることが判明しました。

 

元社員は開発の中心メンバーで、重要なノウハウを熟知していた人物でした。

 

【解決方法】

 

D社は弁護士を通じて、元社員と新しい会社に対し、「営業秘密の不正使用」に基づく損害賠償と差し止め請求を行いました。

 

ここで重要だったのが、D社が退職前に結んでいた「秘密保持契約(NDA)」と、社内ルールとして開発情報へのアクセス制限を行っていた記録です。

これにより、「情報は営業秘密として管理されていた」と認められ、訴えは受理されました。

 

結果として、ライバル会社は当該ソフトの販売を中止し、一定額の和解金を支払うことになりました。

 

【教訓】

  • 社員と交わす「秘密保持契約」は必須

  • 社内でも情報へのアクセス管理やパスワード制限を行うこと

  • 知的財産やノウハウも「守る仕組み」がなければ、盗まれるリスクがある


トラブルは「起きてから」では遅い

 

ここで紹介した3つの事例は、どれも中小企業が日常的に直面する可能性のあるトラブルです。しかも、その多くが、事前に対策していれば防げたものばかりです。

 

よくある「油断」

  • 「昔からの付き合いだから、大丈夫だろう」

  • 「うちは小さい会社だから、そこまで気にしなくていい」

  • 「従業員はうちのことをちゃんと考えてくれている」

 

こうした油断が、経営の足を引っ張る落とし穴になりかねません。

では、どうすればいいか?

 

以下のような対策を講じておくことで、法的リスクを大幅に減らすことができます。

 

✅ 最低限やっておきたい法的備え

  • 契約書や注文書をしっかり交わす

  • メール・チャットなど記録を残す習慣をつける

  • 就業規則にSNSや情報管理のルールを明文化する

  • 退職時に秘密保持契約を結ぶ

  • 何かあったときは、すぐ専門家に相談する


まとめ:法律は「守り」のツールである

 

法律や契約と聞くと、難しそう、めんどうくさい、と思うかもしれません。

 

しかし、実際は「自分の会社を守るための道具」です。

トラブルが起きてから慌てるのではなく、起きる前に防ぐことが何より大事

 

中小企業こそ、法的な備えをきちんと整えておくことで、信頼を守り、継続的な経営につなげることができます。

 

ぜひ、今回の事例をきっかけに、自社の契約・情報管理・就業規則などを一度見直してみてください。


 
 
 

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