商標登録しないと損する?社名・ロゴを守るために必要なこと
- moriyama

- 6月6日
- 読了時間: 5分
中小企業や個人事業主の方とお話ししていると、
「商標登録って大企業がするものじゃないの?」
「会社名なんてみんな違うから登録なんてしなくても平気でしょ」
といった声をよく耳にします。
しかし、社名やロゴを商標登録していなかったために、大きな損失を受けたという中小企業の実例は決して少なくありません。
ときには、長年積み重ねてきたブランドや信用が、一夜にして崩れてしまうこともあります。
この記事では、弁護士の視点から、
商標登録の重要性と、社名・ロゴを守るために最低限知っておくべきことをわかりやすく解説します。
1. 「商標」とは何か?身近な例で解説
まず、「商標」とは何かを簡単に説明しましょう。
商標とは、**商品やサービスの名前やロゴなどを、他と区別するための「しるし」**のことです。
たとえば、
コンビニの「セブン-イレブン」
飲料の「コカ・コーラ」
アプリのアイコンやロゴマーク
こうした名称やマークは、すでに商標登録されており、他人が勝手に使うことはできません。
商標登録をすることで、その「名前」や「ロゴ」について、法的に独占的な使用権を得ることができます。
2. 商標登録をしていないと、どんなリスクがあるのか?
では、商標登録をしていないと、どのような問題が起きるのでしょうか?
実際に起こりうるリスクを見てみましょう。
❌ リスク①:他社に先に商標登録されてしまう
一番多いのが、「自社が長年使っていた社名やロゴを、他社に先に商標登録されてしまう」ケースです。
その場合、自分が作ったにもかかわらず、「勝手に使うな」と警告を受けることすらあります。
さらに悪質なケースでは、相手から損害賠償や使用差し止めを請求されることも…。
➡ 商標は“先に登録した人”が原則として保護されます。
たとえ自分が先に使っていたとしても、登録されていなければ保護されにくいのが現実です。
❌ リスク②:せっかく育てたブランドが使えなくなる
長年の努力で築いてきた社名やサービス名、ロゴなどが、急に使えなくなると、顧客や取引先に混乱が生じます。
看板や名刺、チラシ、Webサイトなど、すべて変更する必要があり、大きな経済的損失と信用の低下につながります。
❌ リスク③:模倣や悪用を防げない
商標登録をしていないと、第三者に似たような名前やロゴを勝手に使われても、法的に止める手段がありません。
競合他社が似たようなサービス名を使って顧客を奪う、いわゆる「便乗商法」に遭ってしまう危険もあります。
➡ 商標登録をしておけば、法的に使用差し止めや損害賠償を請求できる強力な権利になります。
3. 中小企業でも商標登録が必要な理由
商標登録は、大企業だけのものではありません。
むしろ、次のようなケースでは中小企業こそ、積極的に商標登録を検討すべきです。
✅ ケース①:社名・屋号を広く展開している
広告・チラシ・Webサイト・SNSなどで社名を前面に出している場合、模倣されたときの被害が大きくなります。
✅ ケース②:店舗を展開している
看板や内装、ユニフォームなどにロゴや名称を使っている場合、急な変更が困難です。
✅ ケース③:ネット販売を行っている
ECサイトやアプリなどで商品・サービス名を前面に出している場合、同名・類似名が検索に出てくることで売上に直結する問題が起きます。
4. 商標登録できるもの・できないもの
商標登録できるものは多岐にわたりますが、代表的なものを紹介します。
● 登録できる例
会社名、屋号(例:「〇〇商店」)
商品名・サービス名(例:「やさしい英会話」)
ロゴ・マーク(図形、図案)
スローガンやキャッチフレーズ(一定の条件あり)
▲ 登録できない例
一般的すぎる名前(例:「パン」「英語教室」)
他人の名前・地名のみ(例:「東京」単体など)
公序良俗に反する表現
すでに似た商標が登録されているもの
➡ 商標の可否は専門的な判断が必要です。出願前に調査や専門家への相談をおすすめします。
5. 商標登録の流れと費用
【登録の流れ】
商標の決定・調査
→ 類似商標がすでに登録されていないか調べる
出願(特許庁へ)
→ 書類を作成し、出願します
審査(約6~12か月)
→ 問題がなければ登録へ進みます
登録料の支払い・登録完了
→ 登録後、商標権が発生します(10年間有効)
【費用の目安】
出願料:12,000円(1区分)
登録料:28,200円(1区分・5年分)
※弁理士に依頼する場合は別途報酬がかかります(5万円~10万円程度が目安)
➡ 中長期的に見れば、ブランドや事業を守る“保険”としては安価な投資ともいえます。
6. 弁護士に相談すべきケースとは?
以下のような場合には、弁護士への相談が有効です。
自社の名前やロゴを模倣された
商標権侵害で警告書が届いた
自分の商標が他人に登録されてしまった
どこまでが「類似」か判断が難しい
M&A・事業譲渡で商標権の取扱いを明確にしたい
弁護士は、商標に関する交渉や訴訟の対応も可能です。また、他の知的財産(著作権・営業秘密)との関係整理も含めて、法的な全体像をアドバイスできます。
まとめ:商標登録は会社とブランドを守る“盾”
社名やロゴは、企業の顔であり、ブランドの象徴です。
それらが法的に保護されていなければ、他人に奪われる・使えなくなる・信用を失うといったリスクを抱えながら、事業を続けることになります。
特に中小企業や個人事業主にとって、一つひとつのブランドが命綱であることも少なくありません。
だからこそ、早めの商標登録が「未来の損失」を防ぐ鍵になります。
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